悪女は恋人たちを手放した。恋人たちはそれを許さなかった。







「何故?何を言っているのかな?エマ。僕も王族なんだよ?そしてその王族のみが知る情報を与えたのはエマじゃないか」

「…っ!」


おかしそうに私の疑問に答えたリアムの言葉に私は絶句する。

そうだ。リアムは隣国の王子だ。そして私は王族のみが知る情報をルークに与えていた。ルークがその知識を知っており、リアムにそれを伝えた。あとは王族の権利でその王族のみが知る異世界へ渡る方法を探し出せばいい。

きっと私を探す為にあらゆることをしたのだろう。まずは世界中を探して、それでも私を見つけられなかったから異世界へ探しに来た。


「私を探したのね。世界中、全てを」

「そうだよ。エマ、アナタを捕らえる為にね」


肩を落としている私に対してリアムは相変わらず甘く微笑んだ。


「僕には王子としての権力がある。ルークには知識、レオには魔術。僕たちは全て持っている。この異世界へはレオの魔術で来たんだよ」


リアムが私の頬に優しく触れる。
私はただそれを受け入れた。


「…そう。本当に私をよく見つけられたわね」


まだまだ心の中は困惑で騒がしいが表面上は冷静さを保って私はリアムを見つめる。


「今日やっと見つけられたんだよ。それまでずっとアナタと夢の中でしか会えなかったのは辛かった」

「…え」


リアムの予想外の言葉に私は先程せっかく作り上げた表面上の冷静さを崩しかける。


「…待って。どういうことなの。夢の中で私たちは会っていた?じゃあ私の夢は…」

「エマ、落ち着いて?」


困惑していると今度はルークが心配そうな顔で私を見つめて、口を開いた。







< 59 / 66 >

この作品をシェア

pagetop