悪女は恋人たちを手放した。恋人たちはそれを許さなかった。
「エマは王族のみ知る秘密の方法でここへ来て僕たちから見つからないようにいろいろな魔術を使ったでしょ?その使われたかもしれない魔術についていろいろ調べているうちにある欠陥があるかもしれないことに僕は気がついたんだ」
「…そんなはずはないわ。私の魔術は完璧だった」
「そうだね。でもエマは知っていた?記憶操作の魔術で記憶を消された人間は稀に眠っている状態の時に記憶が覚醒するって」
「…っ」
「その顔は知らなかったんだね。エマもその稀な内の1人で寝ている間は記憶が覚醒していた。エマの正確な場所の特定は難しかったけどエマの意識だけなら数ヶ月探せば見つけられたよ。だからその覚醒している間の意識を捕らえて、僕たちから逃げ出そうとした記憶を消して、夢の中であの日の続きを繰り返せるようにしたんだ。レオの魔術で」
にっこりと愛らしく笑ってルークは夢の全てを説明した。
私は最初こそルークの言葉を否定しようとしたがルークの知識の前では私は無力であり、何も言えなくなってしまう。
「エマ、今のお前は無力だ」
何も言えずに固まっていると今度はレオが相変わらずの無表情で口を開いた。
「今度は俺がお前を縛ることができる。記憶の改ざんも行動の制約も何もかも俺はエマにできる」
「…何?私に復讐しますって?」
「違う」
力なく言った私の言葉を悲しげに否定したレオの耳には未だに私が付けたルビーのピアスが光っている。だがレオの言った通り魔術が使えない私は無力である為、あのピアスも何の意味も持たないものだった。
「そうでしょ?リアムもルークもレオもおかしいわ!どうして私のためにそんなことをしたの!?目を覚ましなさい!復讐以外に一体なんだと言うの!?」
冷静さなんてもうない。
私はただおかしくなりそうな頭を抱えて彼らに叫んだ。