蜜甘同居こじらせ中 その後 短編集
一応、僕にとって千柳さんは、
人生の恩人でもあって。
消したい過去の泥沼から、
光の世界に引き上げてくれた人。
千柳さんに
少しくらいは恩返ししないとな。
「わかったよ。
卵焼きを作るから、
千柳さんは卵を割って」
最大限の譲歩をしたのに。
千柳さんは不服顔。
「俺はもっと、
手の込んだものを作りたい。
雪那がビックリするような……」
「初めから欲張りはダメ!
おいしく作れると思えないから!」
僕の言葉に
千柳さんは諦めモードで、冷蔵庫に向かった。
そして、卵を持って戻ってきた。
ちゃんと卵を選べたんだ。
安心した~。
卵がどれかわからないって言われたら、
「部屋に帰れ!」って
怒鳴っちゃうところだったし。