天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
「季帆。片山さんは大丈夫だ。行こうか」


 涙が止まらなくなった私を、陽貴さんは促した。



「ちょっ。倉田先生、俺の香月さんを泣かせたんですか?」


 涙を拭いてからナースステーションに戻ったのに、目が赤かったのか奥村先生に指摘される。


「誰の香月だって?」


 ギロリとにらみつける陽貴さんは本気モードだ。


「国枝。片山さんは夕方の検温なしでいい。しばらく入室禁止」
「えっ? わかりました」


 国枝さんは首をひねりつつも了解している。


「倉田先生、片山さん……」


 師長が近寄ってきて陽貴さんに問いかける。


「彼は若いし体力があるから、これからどんどん回復しますよ。毎日指示が変わるかもしれませんがよろしくお願いします」
「わかりました」


 片山さんの心が前を向きだしたと師長も勘づいたのだろう。
 うれしそうに目を細める。
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