天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 彼の腕が確かなのは病院外でも評判になっているらしく、他病院で手術できないと宣告された患者さんを引き受けるときもよくある。

 そのせいか、脳神経外科のドクターの中では断トツにオペが多い。

 体力的な心配はもちろんのこと、命に直結する手術がほとんどなので彼の精神的な疲労がいつも気になっていて、少しは休めないかと気を揉んでいたからだ。


「そう。休みを申請しているんだ。そういえば、香月も休みだったよね」


 え……。
 彼の休暇も初耳だけど、私は休暇申請なんてしていない。


「ほら、これ」


 彼は白衣のポケットから書類を取り出して私に見せる。
 それは休暇願で、すでに師長の了承印まで捺してあった。

 私のサインが入っているけれど、書いた記憶はない。
 筆跡は真似てあるが絶対に陽貴さんの字だ。

 偽造よ、これ。


「まずくない?」
「季帆が黙ってれば問題ない」


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