天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 小声で会話を交わす。

 共犯にしないでよ。


「倉田先生、ちょっとお願いします」
「了解」


 ナースに呼ばれた彼は、私に休暇届を押しつけて出ていった。

 どうして休暇なんて取ったのだろう。

 彼の勤務予定表を改めてチェックすると、土日は日直も宿直もない上に、病院から連絡があったらすぐに駆けつけられるようにしておくオンコールすら外れている。

 こんなことは結婚してから初めてだ。

 なにかたくらんでる?

 まあ、忙しい彼が休息できるのには賛成だし、しかもふたり同時に休暇を取れるなんてこの先もあまりないはずだ。

 純粋にうれしく思う私は、顔がニタつかないように気をつけながらカルテの入力を始めた。



 そのたくらみがなんなのかわかったのは、翌日の金曜の夕方。
 昨晩は陽貴さんが宿直で帰ってこなかったからだ。

 私は夕食のあとソファで問い詰めた。


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