天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 いつか彼のオペに参加したいという夢があったが、まさか結婚するとは予想外だったし、同じフロアに夫がいるのはなんとなく照れくさい。
 白いシャツに紺のベストとスカートという事務員の制服でナースステーションにいるのはまだ慣れないけれど、仕事はすこぶる順調だ。


「香月(こうづき)。明日の検査予定見せて」
「はい。こちらです」


 首から聴診器をかけた白衣姿の陽貴さんに予定表を手渡す。香月は私の旧姓なのだ。


「香月が来てから、検査別に分けてもらえるようになってわかりやすくなったよ」
「ありがとうございます。倉田先生。こちらのカルテ、薬剤名が抜けていませんか?」


 私は電子カルテを表示して、間違っていると思われる部分を指さした。


「あー、ほんとだ。さすがだな。クラークにしておくのはもったいない」


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