俺様幼馴染は素直になれない!
10年後
私たちは、 10年後。
16歳の私が見た正夢が現実になった。
26歳になった私は、永瀬瑠翔と結婚した。
そのあと、3か月後に私のお腹の中に赤ちゃんができた。
「瑠翔がパパになるんだね。信じられないね」
私はソファーに座り、隣にいた瑠翔に話しかける。
「ほんとだな。今俺たち、社会人だもんな。付き合って10年。そして、結婚した。今や、俺は不動産会社の会社員で、結愛は保育士。高校生だった俺たちがこんなに大人になったな」
瑠翔は微笑ましく、私の腹の中にいる赤ちゃんを優しそうに撫でていた。
私もその姿を見て、微笑んだ。
「そうだね。私たちずっと一緒にいるのに、知らないこともいっぱいあったね。覚えてる?瑠翔が俺様キャラ作ってたなんてね」
私はうふふと笑って瑠翔に向かって、言う。
「…なっ。もう過去のことだろう。あの時は俺も必死だったんだからな。結愛に想いをどう伝えようか俺なりにもがいてたんだから」
瑠翔は照れた様子で昔のことを思い出すかのように少し興奮気味で私に慌てて伝えた。
「…ふふふ。そうだね。ありがとうね」
私は瑠翔の目を見て、笑った。
「あれから俺たち、変わった?」
瑠翔は私に聞いてくる。
「変わってないじゃない。昔から。俺様キャラは作っていたけど、瑠翔の一部になってるでしょ。ほら、さっきだって。おい、あれどこだとか言って」
私は瑠翔に言い返すように返事をした。
「……あれは、あれで。違うから。俺様じゃないから。はあ、分かってるくせにひどいな。結愛は…。だったら、結愛だって俺に小さい頃から片思いしてたじゃないか。結愛だって俺みたいに伝えられなかったんでしょ」
俺は拗ねたように結愛に言うと、口を膨らませて結愛は見てきた。
「……そうだけど…。瑠翔がいきなり冷たくなって、私のことは別に幼馴染以上にはなれないと思ってたから…」
私は悲しそうにそう言うと、瑠翔は申し訳なさそうにしていた。
「…ごめん。あの時は思春期もあったし、結愛が傍にいるだけでいいと思っていた時もあった。だけど、あの上杉に取られそうになった時、好きだって気持ち伝えていないのに、傍にいるだけは違うんじゃないかと思って、結愛に告白したんだから」
瑠翔は私のお腹にいる赤ちゃんに、ねぇと話しかけながらも私を見て、声を発した。
「そんな時もあったね。懐かしい」
私は瑠翔の奥にある瞳を見て、思い出に浸った。
「懐かしいじゃないから。高校卒業した後も、大学に行ってもモテていたって、智子さんが言ってたな。その度に男どもから蹴散らしてくれて助かったんだからな」
瑠翔はため息をつきながらも、私を想っていることを伝えてくれた。
「そうだね。それから智子のこと、ちゃんと名前で呼んで、さん付けするようになったしね。瑠翔も人のこと言えないでしょ。一樹さんから連絡来るたび心配だったんだから。瑠翔は結愛ちゃんを想ってるから大丈夫っていつも伝えてくれて助かったんだから」
私は瑠翔にうん?と聞きながら、言い返した。
「…ちゃんと断ってたから大丈夫だって。まぁ、それより今を大切にしよう。赤ちゃんも生まれることだし。なっ?」
「そうだね。この子も無事に生まれて、大切にしようね」
私は目を細めて、瑠翔に話しかけた。
瑠翔は満面な笑みを浮かべて、ああと返事をしてくれた。
あの正夢のように、私と瑠翔は結婚した。
そして、私のお腹の中には私たちの子供がいる。
10年前に見た光景そのものだった。
今度は瑠翔と私と子ども三人で手を繋ぐことの夢を見るかもしれない。
見ても見なくても子供が大きくなったら、手を繋いで歩いて行こう。
瑠翔と私と子供三人で、辛いことも悲しいことも楽しいことも笑顔を浮かべて、進んでいく。