双生モラトリアム

「……僕も生身の人間だから、そう言われると正直キツい」

立花先生は視線を落として、そう呟くように言った。

「ほら……やっぱり……なら、中途半端な優しさなんていらない!
善人面するのは気持ち良かった?お情けでこんな惨めな人間に善意を施すのは……
無責任な甘さをくれるくらいなら、もう放っておいて!」

さらに追い打ちをかけようと、わざとキツい傷つける言葉を選んで言い放つ。

(お願い……もう、私から離れて……!このままだと私はあなたにすがりたくなってしまう……こんな厄介者を抱え込ませるなんてダメだ。だから……お願い!!)

「あなたのそういう独善的なところが気持ち悪い……吐き気がする!!」
「……うん、僕もそう思う」

あろうことか、立花先生も私の言葉を肯定した。

「……?」
「ゆーちゃん、僕が誰にも優しいと思う?悪いけど、君こそ僕を白馬の騎士(ナイト)とか勘違いしないでほしい」
「……な、何を……」

唐突に立花先生が言い出した話の行方がわからない。彼は、フッと唇の端を上げて自虐的な笑みを作った。

「僕だって、打算的だし醜い想いはたくさん抱えてる。君にだけ優しいのは、僕に惹かれてほしいからだけ……君が大切というのもあるけどね。それに、兄と君の間に何があっても僕は諦めるつもりはないよ」
「先生……」
「先生、じゃなくて颯と呼んで、唯。僕はもう“いっくん”という子どもじゃない。身も心も大人だよ」
と言いながら。
「……の、つもりだけどね。正直、自分が大人なのかと訊かれれば自信はないよ。僕を騙り唯を弄んだ兄が憎いし妬ましい……唯にだって、裏切られたという恨めしい気持ちは少なからずあるから」

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