御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


「言い過ぎたかなぁ……」

あんな風に、思いのたけをそのまま声にする必要はなかったかもしれない。東堂さんが言った条件だと難しいと伝えればよかっただけかもしれない。

でも……今更考えたところで後の祭りだ。無駄でしかない。

「よし」と気持ちを切り替えるために声を出して立ち上がると、テレビラックの上に立てた雑誌が目に入る。

テレビの横にある、幅にして辞典が三冊ほど並べられるスペースは、その時読書中の本の置き場所なので、ラインナップはコロコロ変わるのだけれど……。
今その場所を占拠している雑誌をまとめて手にとる。

雑誌のタイトルは〝無理なく楽しめるドライブデート〟〝話題のカフェ100選〟〝初対面の相手とも弾む話題〟。
今日のお見合いに備えて買ったものだった。

「ごめんね。役に立ててあげられなくて」

雑誌の表紙を指で撫でてから、納戸の奥にしまい込む。

それにしても。
お見合いがたった二十分足らずで終わることってあるんだなと改めて思うと、笑みがこぼれていた。


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