御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない
それに、昨日帰国したばかりの東堂さんに面倒事は持ってきたくない。
だから、とりあえず……と思い、私にとって一番大事な部分だけを確認すると、東堂さんはわからなそうに眉を寄せた。
「いるわけがないだろ」
その顔は嘘をついているようには見えないし、今までの東堂さんの態度を見る限り誠実な人に思えるから、東堂さんの答えは私的にもしっくりきた。
それでも確認したかったのは、やっぱり少しの不安があったからかもしれない。
東堂さんを〝晃成〟と当たり前のように呼ぶ彩佳さんの声は、まだ耳に残っていた。
「ですよね……」
当然「なにかあったのか?」とすぐに聞かれたので、笑顔を向けた。
「いえ。東堂さんくらいの立場だと、たとえば幼い頃からの婚約者だとか、そういう方がいてもおかしくないなって思って、聞いてみたくなっただけです」
東堂さんは少しの間私を観察するようにじっと見る。そのあと、ひとつ息をついた。
「いない。親は俺の交友関係には基本的にノータッチだし、親が見合い話持ってきたのも今回が初めてだ。それに、万が一そんな関係の相手がいたとしたら、ひなたに告白する前に破談にしてる」
ハッキリした物言いだった。でも、その通りだと思う。東堂さんは、そういうタイプだ。
でも……じゃあ、彩佳さんは一体なんだったんだろう。
とりあえず、ひとつは確認できたので安心して笑顔を返して車を降りる。
マンションのエレベーターを待ちながら、そういえば彩佳さんもずいぶんとハッキリした物言いだったなぁと考えていた。