御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


「……あれ?」

飲み会から三日が経った月曜日。
出社して更衣室でロッカーにバッグを入れようとした際、バッグの中に見慣れない封筒が入っていることに気付いた。

家に届いた郵便物をここに入れた覚えもなければ、路上で配っていたものを受け取った覚えもない。
というか、朝、家を出るときにバッグを確認しているけれど、その時にはなかったはずだ。

でも……じゃあ、どこで紛れ込んだのだろう。

手に取ったそれは、一般的に使われている茶封筒で宛名も差出人もなく首を傾げる。
当然切手もないので、つまりこの手紙は、郵送されたものではないということになる。

私が使っているバッグはレザーのトートバッグでチャックはついていない。だから、可能性は限りなくゼロに近いにしても、誰かの郵便物が紛れ込んだというのも考えられる。

とりあえず、誰宛かわからないことにはどうしようもないので、私以外に向けた手紙だったら申し訳ないと思いながらも、封筒から中身を取り出す。
そして、縦に四つ折りにされていたA4サイズの白い紙を開き……思わず「……え」と声が漏れた。

紙に書かれていた文字は〝東堂晃成と別れろ〟だけ。印刷されたもので、手紙とも言えないような内容だった。
なにがなんだかわからずに、印字された黒い文字を呆然と眺めていて、そのうちにまだ重みのある封筒に気付く。

手紙の内容が内容だっただけに恐る恐る封筒の中を覗き、入っていた写真に息を呑んだ。

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