御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


〝別れろ〟と要求しているってことは、犯人は東堂さんと私が付き合っていると勘違いしているのだろうけれど……だとしたら、金曜日の飲み会よりも前に、東堂さんと私がふたりで会っているところを少なくとも一回以上は見ていた……?

その時に私たちの仲を疑って、金曜日に私を付けてあの写真を撮ったのだろうか。
写真を送り付けてまでして私を怖がらせるのだから、よほど別れさせたいのだろう。別れさせて……犯人はその後、どうしたいのだろう。

『普通に考えたら、東堂さんがらみの女かなって思うけど。元カノとかだけじゃなくて、あれだけの立場があって見た目もいいってなれば、一方的に想いを寄せる危ないタイプの女もいそうだし。ストーカーとか』

君島先輩の言葉を思い出し、眉を寄せる。
もしもストーカーだとしたら、東堂さん自身もなにかしらもう被害は受けているかもしれないし、情報を共有した方がいいかもしれない。

元カノだとしたら……と考え、それまで推理モードだった思考がピタリと止まる。
東堂さんの隣に立つ〝誰か〟を想像してしまったからだ。

東堂さんに今まで特定の女性がいなかったとは思わない。
飲み会の時、本人だって特別なひとりは意識して作ってこなかったけれど、それなりに付き合いはあったというようなことを話していた。

東堂さんは素敵な人だし、一緒にいるだけで楽しいと恋愛未経験者の私ですら思うのだから、モテて当然だ。
当然……なのだけれど。

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