御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


「いえ……その、私も東堂さんと同じ気持ちなので」
「あ……へぇ、そうなんだ」

そう言った渡さんは、一応笑顔ではあったものの、どこかぎこちなく感じた。
営業スマイルは渡さんの得意分野なのに、こんな笑顔は珍しい。

少し不満そうにも見える顔を不思議に思い見つめていると、君島先輩が言う。

「いつまでも同期ポジションに甘んじてるからよ」

からかうように笑った先輩に、渡さんが眉を寄せる。

「距離感計ってたんですよ。じょじょにいかないと嫌われておしまいになりそうだったから……つーか、だって、急にそんな肩書のハイスペックなライバルが出現するなんて思わないじゃないですか」
「肩書だけでこういう結果になったと思っているなら、それ、春野ちゃんへの侮辱だからね」
「え、私、今、侮辱されてたんですか?」

どのあたりがそうだったのかがまったくわからず驚くと、渡さんは「違う違う」と焦ったように言い……それから「あー、でもマジかー」と頭を抱えてしまった。

「まぁ、渡くんは放っておくとして。私はいいと思うなぁ。東堂さん。一度会っただけだけど、誠実そうだったし。春野ちゃんへの態度見ててもおおらかで安心できた。でも、東堂さんって忙しいんでしょ? せっかく付き合いだしたのにあまり会えなかったりするの?」

先輩に聞かれうなずく。


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