能力を失った聖女は用済みですか?
「皆で一生懸命考えたんだ。シスルやアミード、シータやイズール……王宮の者やレグラザードの民達にも聞いたりして……」

「はぁ……一体何を?」

「ルナへの感謝の気持ちをどう表すべきかを。お前は何も欲しがらないだろ?今日だってオレが無理に言わなければ、衣装を仕立てようとは思わなかったはずだ」

「ええ、まぁ……だって、褒美を貰うようなことしてませんから」

何度も言うように、私は大したことはしていない。
シャンバラの人達にどうしてそんなに感謝されるのかも正直わからないくらいなのだ。

「だからだよ。欲しがらないルナにどうしたら感謝を伝えられるか……物ではない何かで。と、考えたら……」

「それで……花火……」

そう呟やくと、大地を震わす大音響が響いた。
赤い大きな花が咲き、散り際に青い小花が煌めいて流れて落ちる。
そのなんと美しいことか。
私は夜空を眺めたまま目を離せなくなった。

「シャンバラからルナへ。愛と感謝を込めて、光の花束を……」

「……ありがとう……ございます……」

花火に照らされたカイエンの笑顔を見て、私は今日の彼の行動を理解した。
最初から、ここに連れてくるために町へと誘ったのだ。
生地を見に行こうと言ったのは、自然に城下へと連れ出すため。
思えば、今日は朝からシータも様子がおかしかった。
なんだかそわそわしたり、ニヤニヤしたり……。
それが、このサプライズプレゼントの件だとすると、全て納得がいく。

「本当に……綺麗です」

シャンバラの花火は、皆の心のように温かくて強くて美しい。
夜で良かった……。
辺りが暗くて良かった。
もし、明るかったなら、私の涙をカイエンに見られていたから……。
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