能力を失った聖女は用済みですか?
それから、ヤマトマの商人に生地を選んでもらい、王宮に届けて貰う手筈を整えると、私達は町の端まで移動した。
せっかく外に来たのだから、もう少し散策しようとカイエンが提案したからだ。
レグラザードの町の端には高台がある。
そこからは城下が一望でき、眺めが最高だと皆が話していた。
だけど……空にはもう月と星が見える時刻。
どんなに目を凝らしても、闇の中に浮かぶ灯りしか見ることは出来ない。

「あの……カイエン様?」

「ん?」

「……星が綺麗ですね……」

なんて言ってみたけど、本当は手持ち無沙汰で困っている。
確かに月も星も美しいけど、暗すぎて隣のカイエンも見えないくらいなのだ。

「うん……星も綺麗だが……もう、そろそろ始まるぞ」

「何がですか?」

問い返した直後、ドォンと大きな音がした。

「うぇっ!?大砲ですか!?戦争ですか!?何なんですかーー!?」

「上を見ろ」

「……え?……あっ」

恐る恐る見上げると、夜空から光が落ちてくる。
光がゆらゆらと落ちて消えると、また大音響が響き、暗闇に美しい大輪の花を咲かせたのだ。

「これは……」

もしや、花火では?
でも、この世界に花火があるなんて聞いたことがない。
言葉を失う私に、カイエンの軽快な声が聞こえた。

「ヤマトマ国の隣にスーリヤという国がある。そこでは、こうして火薬に色をつけ、詰めて打ち上げる風習があるらしい」

「……花火、あったんですね。この世界に……」

「お前のいたところでは、ハナビ、というのか……?」

「はい。でも、なんでシャンバラで花火が?」

スーリヤから贈られたのかな?
ルナシータ発注名簿に「スーリヤ」の名前もあったから、その関係で?
いくら考えてもわからないので、諦めてカイエンの言葉を待っていたけど、なかなか返答はない。
改めて問おうとした瞬間、カイエンはやっと口を開いた。
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