能力を失った聖女は用済みですか?
「あのな、ロランに行っても、一人で突っ走ったりするなよ?」

「……え、ええ。はい、もちろん」

「ほんとだな?」

「ほんとですよー。だいたい私が突っ走ったことなんてありまし……」

偉そうに言ったものの、あることを思い出してしまい目を泳がせた。
恐らく、カイエンがここまで念を押すのは、アルバーダ集落での一件が原因である。
ハシムを助けるため独断で救出に向かった……そのことだ。

「……ありましたね……すみません」

「ああ、いや、謝らなくていい。ロランは非常に不安定だからな。行動の全てに気をつけなくてはいけない」

「はい。全くその通り……」

面目ない……年上のクセに、考えなしでスミマセン。
めちゃくちゃ反省してます、と私は全身全霊で訴えた。

「わかっていればいい……常に報告・連絡・相談を心掛けてくれれば」

「ホウレンソウ……そうですね!優良企業の基本ですからね!」

「ホウレンソウ?ユウリョウキギョウ?……まぁ、いい。明日は早い。今日は早めに休んでおくようにな」

「はい」

カイエンは自分の椅子に座ると、束になった書類に目を通し始めた。
出発のギリギリまで仕事をするなんてやっぱり王様は大変だ。
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