能力を失った聖女は用済みですか?
王宮広間の中央に絨毯を敷くと、子供達はそこに肩を寄せあって座る。
私はその前に椅子を置き、威張って仕切るシータの言葉を待った。

「はい、みんな。今からルナねぇさまのお話を聞くよー?静かにお願いしまーす」

「はーい!」

シータの言葉に、子供達は元気に返事をする。
気を良くしたシータは、私に向かってニンマリした。
それが、どうぞ始めてください!の合図である。

「え、えーと、こんにちは!私はルナです」

そう言うと、前に座った男の子が「知ってるよー!」と叫び、周りの雰囲気が和む。

「あ、そっか。そうね。コホン……じゃあ、本題ね。皆は、精霊って見たことある?」

すると、全員が首を横に振った。

「精霊はね、本来見える存在じゃない。でも、たまに皆の側に来てお願いを聞いてくれたりする存在なの」

「見えないのに、いるの?」

一番後ろに座る女の子が言う。

「シャンバラでは馴染みがないでしょうけど、精霊信仰の国ロランでは、そう信じられているわ。聖女と呼ばれる存在が精霊の力を借りて国の豊穣を助けるって」

そう言うと、皆の瞳が輝き、口々に言葉を発する。

「聖女ってどんな人?」

「大地を割るってほんと?」

「角がはえてるんだよね!」

「違うよ!足が8本あるんだよっ!」

……大地は割れないし、角はない。
そして、私はタコじゃない。
子供達の言い合う様子を眺めながら、私は他国における聖女の浸透率の低さに驚いている。
ロランでは一般的なのに、一歩他国に出ると、聖女の姿や力は全く伝わってない。
おかしな力を使う化け物か何か、そう思われてる気がする……。
それにしても、どうしてロランは聖女の情報を出さないようにしたのか。
その真意はわからないけど、とりあえず私は、聖女=化け物という認識だけは払拭したいと強く願う……。
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