チョコなんてあげないっ!
「はぁ……」
広斗と両思いになって、甘いバレンタインどころか、失恋して苦いバレンタインになってしまったな。
「おーい! りーん!」
ガトーショコラを口へ運びかけたとき、あたしを呼ぶ声が聞こえた。
「琳! どこだー?」
その声が、徐々に近づいてくる。
「あっ、琳、やっと見つけた。
お前、自分の教室にいたのかよ」
広斗がはぁ、とため息をつきながら、教室へと入ってくる。
「琳、話があるって人を呼び出しておいて、連絡もよこさず、すっぽかすとか何?
俺、屋上でずっと待ってたんだけど?」
広斗が怒っているのが、その声から分かる。
しまった。失恋のショックで、広斗に連絡するのをすっかり忘れていた。
「ごっ、ごめんね。本当にごめん。
……あれ、広斗、そういえば七海ちゃんは? 一緒じゃないの?」