未来の種
「乗って。」

そう言って、エレベーターに私を押し込み、8階を押す。一度もこのマンションの住宅部には来たことがないのに、迷いがない。

「…なんで? どうしてここにいるの⁉︎
優、いつ帰ったの?」

「……」

質問に答えようとしない。
なんだかすごく…怒ってる?

8階に着くと、1つしかない住戸の門を開け、私の鍵を奪ってドアを開ける。

「ちょ、ちょっと!」

「…入って。」

有無を言わせない威圧感。
…ここは私の家なんだけど。
とりあえず、大人しく入る。
優が後ろ手で鍵を締めると、私に早く上がるように促す。リビングに入ってやっとマスクを外し、私を抱きしめてくる。

「美衣子…やっと会えた。」

「優…。
帰ってたの? NYはロックダウンだって、テレビでやってた…。優、大丈夫?」

「……うん。16日前にあっちを出た。」

「え? そんな前に⁉︎」

「帰国するにも制約があって、空港近くの施設で14日間隔離されてた。今日やっと解放されたんだ。」

そんなに前から日本にいたなんて…。
全く知らなかった。

「美衣子、俺をブロックしてただろ?
どうせ連絡しても繋がらないのはわかってたから。」

「あ、ご、ごめん…」

「さっきの…。
美衣子は公親と付き合ってるのか?」

え! ひょっとして正門前で喋っていた時、見てたの⁉︎
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