未来の種
「そうなんだが、幼稚園も非常勤だし。こっちもなかなか見つからなくてな。
……人物調査書が間に合わないんだよ。
卒業生以外で新たに探すには、その人物の調査書を理事会に提出し、審査を受けなければいけない。
しかし、このご時世で、調査会社が動けない。調査が難航してな。
卒業生で探してみたが、音楽の教師は見当たらない。
それで急遽、1年だけという約束で、愛に来てもらうことになった。愛なら小学校の教員免許も持ってるからな。」

叔母の朝倉愛(あさくらあい)は、聖伯父さんと父の妹だ。長年学園の幼稚園教諭をしていた。一時は育児で離職したが、子供達が大きくなった後、また非常勤で幼稚園に戻っていた。美衣子の大先輩にあたる。

「…まあ、お前なら調書も必要ないし、愛には無理矢理引き受けてもらったから、変更可能だろう…。
ただ、私の一存では決められない。
職員会議と理事会にかけるよ。
履歴書をメールで送れるか?」

「すぐに送るよ! 伯父さんありがとう!」

「まだ決まったわけじゃない。
でも、本当にいいのか? このご時世じゃ、確かに音楽活動は難しいだろう。
けど、騒ぎが収まったら、またピアノでやっていくんだろう? 
学期半ばで辞める事は出来ないぞ? 
いいのか?」
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