未来の種
「……そうか。大変だけど、素の状態でAMH検査をしたかったんだ。申し訳ないね。」

「いえ! 申し訳ないだなんて、こちらのセリフです。もう外来は閉じているこんな年末に、時間を割いて頂いているんですから。花ちゃんにも申し訳ないです。」

「ああ、そんな事は気にしなくていいから。オンコールの日も多々あるし、何処にも出かける予定もなかったからね。」

寿貴先生は今年の8月に結婚式を挙げられた。一応新婚さんだ。“一応”というのは、入籍は1年前に済ませていて、すでにお子さんがいるからだ。奥様の花ちゃんは、偶然にも私と昇平の幼馴染だった。花ちゃんはせっかくの冬休みなのに、旦那様がずっと仕事でもいいのだろうか。なんだか申し訳ない。

「美衣子、気にしなくて本当にいいんだよ。」

そこで、今まで無言で脇に控えていた昇平が口を開いた。

「寿貴先生、遠慮なく言ってくれていいよ。美衣子は人の幸せを喜べないような心の狭いヤツじゃないから。」

「え、い、いや……」

「花、2人目が出来たんだよ。」

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