未来の種
「え! そうなの⁉︎
おめでとうございます!
全然、言ってくださっていいんですよ。
おめでたい事ですもの。私も楽しみです。」

これは本当。元々子供好きたけど、自分に恵まれないかもしれないとわかってからは、子供が出来るって奇跡なんじゃないかと思うようになった。妊娠している人に将来を託すような気持ちを持つようになった。私には出来ないかもしれないこと…。だからこそ頑張って欲しいと思う。もちろん、羨ましくもあるけれど。

「寿貴先生、私、幼稚園教諭なんですよ? 子供は大好きなんです。それに、あの可愛い仁貴(ひとき)くんの弟か妹でしょう? 楽しみですよ。」

「あ…うん、…ありがとう。」

寿貴先生はとっても優しい。私をちゃんと気遣ってくれている。

「今はまだ安定期に入ってないし、つわりも少しあるみたいだから、年末年始は家でゆっくりするんだって。…ね? 寿貴先生。」

「あ、ああ。そうなんだ。
……それでなんだけど、美衣子さんさえ良ければ、滞在を伸ばして手術をしないか?」

「手術⁉︎」

「腹腔鏡手術だよ。卵管を少し広げることが出来ると思う。」

手術…。
正直言って怖い。でもそれを受ければ妊娠の確率は上がるのだろうか。

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