短編集(仮)
 『どんな人?』って言われたけど、『うん』って適当に流したからもう聞いてこないかな、なんて思っていたら「花の好きな人って、どんな人?」と訊いてきた。…天音め。侮れない。

「…天音みたいに茶色の目で、天音みたいにくるくるした髪の毛で、短い。チャラそうだけどカラコンじゃないし、地毛。手足が天音より少し長くて、天音より12センチ背が高い人」

「…なんで全部私基準?」

 半笑いになって天音が訊く。
 ……同じ遺伝子なんだから、比べたら説明が楽なんだよ。言えないけど。

「…さあね。あたしの目の前に天音が丁度いるから?」

「なんで疑問系? 花ってばちょっと、どうしたの?」

 曖昧に誤魔化すと、天音が苦笑する。

「……別の人にしよっかな、チョコ渡す人」

 もちろん、好きな人じゃないと1日デートなんて楽しみが全くないけれど。日名瀬家兄妹にあたしの気持ちがバレて気まずくなるよりは、何億倍もマシだ。

「誰!? チョコ!?」

 後ろから大声。
 振り向いてから、思わず「げっ」と呟く。なずなだ。

「誰に渡すの!? 好きな人いんの!? 花に!? えええええええええ!?」

「うるさい! なずな! ちょっと黙ってよ!」

 クラスメイト全員に好きな人いるって、今ので絶対バレちゃったじゃん!!

「なずなの馬鹿。そもそも、あんたがこんな罰ゲーム提案しなければ……」
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