短編集(仮)

「じゃあなんで賛成したの？」

　なずなが訊いてくる。うっ…、それは、後悔してるんだよ。

「軽はずみでした」

「…使い方なんか違くない？」

　天音も入ってくる。
　やめて。入ってこないで。もっと詰んできたじゃん。

「……天音、なずな。聞かなかったことに——」

「なんで？　ずるいよ。だって、クラスメイト全員、花に好きな人がいるって知ったんだよ？　なのになんであたし達だけ？」

　なずながそう言う。「誰のせいでバレたと…」と、小さく呟いてから「じゃあ、もうこの話やめよっか。あたし、もう疲れちゃったから！」となんとか話を終わらす。
　ここで終わらせないと、あたしの学校人生が終わる。

　…学園人生？　どっちでもいいけど、とにかく、終わる。

「…むぅ、まあ、そこまで言うなら……」

「私、もうちょっとでいいから花の恋バナ聞きたかったなぁ」

　2人とも残念そうにしながら、話をやめてくれた。

「…っていうかなずなは、イケメンに罰ゲーム実行しに行ってたんじゃないの？　あたし達にその話を聞かせてよ〜」

「ええ、イケメンいなかったよ。休みだった。このクラスじゃ、東くんくらいしかなぁ……。でもさっき断られちゃったし」

「…はや」

「なずな、そういうの早いね。相変わらず……」

「ね。夏休みとかの宿題はいつも最後までやってなくて、結局天音に見せてもらってるのに」

「ちょ、それとこれとは全然別で——」

「だよね〜」

　天音が遮る。

「…今日も、天音ん家行ってもいい？」