短編集(仮)
「葵にぃね、『寝れない』って言ってた。
なんでって聞いたら、明日好きな子とデートだからって。
時計見たらね、2時だったんだよ。ずっと寝れなかったんだって。やばくない?
私が『それはやばいよ、早く寝なよ』って言ったら、速攻で寝たんだけどね。てゆうかもう、私が言いかけてる時に寝ちゃったんだけどね。葵にぃって、基本規則正しい生活してる方だから、体の方に限界きちゃったんだろうけど。
私、葵にぃのせいでそれから寝らんなくて。好きな子って誰だろうって、ずっと考えてたの。
朝、朝ごはん食べ終わったらもう花がいなくて。用事あったから何も言わずに出かけたんだ。…今考えてみたら、葵にぃもいなかったかもだけど。
結局わかんなくてそのまま用事済ませて、それでも花がいなくて葵にぃに電話したの。
そしたら、葵にぃ、花と一緒にいるって。すごく嬉しそうな声だった。聞いたことないくらい。…なんでなのか、今ならわかるよ、私。
……花も、わかってるんだよね?」
天音が、あたしの赤い顔を指差しながら言う。
…『わかってる』かどうかは別として。
一つの考えは出てきている。
…あたし、葵くんが好きだ。
葵くんは?
すぐそばにある顔に目を向ける。心地良さそうに寝る葵くん。
「…ていっ」
パシッと天音が葵くんの頭を叩いた。
「…ん」
葵くんが、頭をぐりぐりしてくる。
「…ちょ、天音?」
あたしが小声で言うと、天音は妖美に笑って「私、花と葵にぃ、応援するから」と言った。
その笑顔が、可愛らしすぎて、あたしは少し自信を失くす。
…こんな可愛い妹を持って、あたしなんかを選ぶ?
「……は、な?」
虚ろな目。
「……ええっ!?」
葵くんがあたしから飛び退く。
いつのまにか、天音は天音の家の前まで行っていた。既に鍵まで取り出している。
…あとは自分で、ってね。はは。
思わず苦笑い。
「…もしかして夢じゃなかった系?」
あたしよりも年上なのに、全然年上らしくない。
かっこよくもない。
「そうだけど」
「何か?」と続けようとすると、それを遮るように、「花」と名前を呼ばれた。
「俺と、結婚を前提に付き合ってくれますか?」
——それは、チョコレートみたいに甘い、彼との思い出。
END


