短編集(仮)
「なんで俺、こんな夢見てんだ? あ、ゲームのしすぎか。そんで俺、今爆睡してんだな。なるほど」
「そういうことか…」と付け足す葵くん。
「夢じゃ——」
「夢ならいいや」
ふわりと、
葵くんのいい匂いがした。
…へ?
葵くん?
ちょっと?
…あたし、今、抱きしめられてる?
今度はこっちの番だった。
——嘘、あたし、抱きしめられてるの? 夢? 違う、夢じゃない…。だって、葵くんの匂いが、体が。
あたしの想像力でここまで想像できるわけないもん。
我ながら、なんて気持ち悪い思考回路なんだろう、と思う。
けれどそれ以上に、暖かくて、心地が良くて。
「あ、あの…、あ、あお、い、くん…?」
「目が醒めるまで、このままでいさせて」
耳元の声がくすぐったい。
「あ、おい、くん…? 夢じゃないよ、あたしだよ。花だよ、ねえって——」
「好き……」
……へ?
えっと、うん?
意味が…。
振り返ると、葵くんは心地良さそうに、
眠っていた。
…衝撃的、なんだけど。
なんで、寝てるの。
しかも、抱きついているとはいえ、立ったまま寝るなんて、器用すぎる…。
「…はぁっ、いた…。花、葵にぃ……」
いつのまにか追いかけてきたいたらしい天音が、声をかけてくる。
「うまくいったの?」
「いや、寝てるの…。あたしが告白したら、急に寝ちゃって」
「昨日の夜、葵にぃね、隣に寝てる花は起こさずに、私だけ起こしたの」
「え? あ…ごめん、続けて」
理解したけど、なぜ今その話を持ち出すのかが全然わからないんだけど…。