恋獄の鎖
本編

 わたくしが欲しいと思ったものは、全てわたくしの手に入る。

 ――いいえ。
 それは正しい表現ではないわね。訂正しましょう。

 わたくしが欲しいと思ったものは、全てわたくしの手に入らなくてはいけないの。




「シェラフィリア嬢、よろしければ今宵は僕と一曲踊っては下さいませんか」

「今日のドレスもとても素敵ですわ。耳飾りとネックレスのルビーもよくお似合いです」

「目元を彩る化粧品はどちらの商品をお使いですの?」

 わたくしがひとたび夜会に姿を現せば、それだけで場の視線は全てわたくしの元に集まる。

 令息たちは競い合うように我先にとダンスのパートナーに誘い、踊り終えたわたくしを待ち構えていた令嬢たちがドレスや使っている化粧品の話を聞きたがった。

 周りには常に人が集まり、わたくしという大輪の花を讃え、あるいは女王蜂に仕える働き蜂のごとく(かしず)く。



 わたくし――シェラフィリア・ラドグリスは、王都でも屈指の名門侯爵家に生まれた。


 侯爵家でありながらも名門を名乗り、今もなお栄華を誇るのはひとえに初代国王を建国時から支え、その後も代々優秀な高官を輩出し続けているからなのだそう。だからこそ、我がラドグリス家は決して王家とは婚姻関係を結んではいけないという不文律もある。


 そんな中、わたくしは何不自由なく育てられて来ていた。

 両親は結婚して早々に跡継ぎとなる男児に恵まれたけれど、女児も欲しいというお母様の願いはなかなか叶えられなかった。それでもお母様は諦めきれず、結婚十一年目にしてようやく授かった女児が、わたくし。

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