毒蝶
「僕のほうこそ……」
「いいからいいから」


僕の謝罪の言葉はルナに遮られ、僕はルナに背中を押されてローテーブルの前に座らされる。


「これは……?」
「私が作った、特別なお茶。とっても、美味しいの」


言われて一口飲んでみる。


普通のお茶じゃないか……?


そう思った途端、息が出来なくなった。
視界もボヤける。


その中で、ルナが笑っているのが見える。


「ル、ナ……?」
「ごめんね、逞。私、もうあなたには興味なくなっちゃった」


その悪い笑顔は、今まで見たことがなかった。


全部嘘だったのか……?
僕に近付いたのはわざとで、今日までずっと、演技をしていたのか……?


そう思うと、涙がこぼれた。


「なん、で……」


その質問には、ルナは答えてくれない。


きっと醜い姿で転がっているであろう僕を、ゴミでも見るかのような目で見下ろしている。


「さよなら、逞」


僕が言おうとしてやめたその言葉を、ルナはあっさりと言った。
そして僕が何かを伝える前に、ルナは出ていってしまった。


どうしてこうなった……
どうして僕は、愛しい彼女に殺されている……?


遠のく意識の中で考えてみるけど、答えなんて出てきやしなかった。
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