毒蝶
僕のためにも、ルナのためにも。
僕たちはもう、さよならをしたほうがいいのかもしれない。


どれだけルナのことを好きでも、こんなふうに閉じ込めて、暴力を振るってしまうのなら。


ルナとは別れたほうがいい。


だけど、どうしよう。


僕の家にいていいと言った手前、追い出すようなことは言えない。
どうやって別れを切り出せばいいんだろう。


ずるずるとこの生活が続けば、僕はもっと醜くなるだろうし、ルナの体に傷が増えてしまう。


……これが嫌だなんて、僕の勝手じゃないか。
僕が、自分の気持ちをコントロールすれば済む話じゃないか。


僕がもっと、ルナのわがままを受け入れてあげればいい。
他の男に見せたくないじゃなくて、自慢してやろう、くらいに思えばいい。


少しずつストレスがなくなっていけば、今日みたいにルナに手を出してしまうことは、なくなるだろう。


やっぱり、僕次第だ。


ルナと別れる必要はないんだ。


そう気付いて、僕は家に戻った。


「おかえり、逞」


さっきのことなど気にしていないと言わんばかりの笑顔で出迎えてくれた。


「さっきはわがまま言いすぎてごめんね。お詫びというか、お茶淹れたから、よかったら飲んで?」


僕が謝るべきことなのに、ルナに謝らせてしまった。
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