妖精姫ともふもふな妖精猫の王様~妖精の取り替え子と虐げられた王女は猫の王様と冒険がしたい~
 コルセットを必要としないエンパイアラインのドレスはカテリアーナ一人でも着られる。だが、それをしてしまうとエルシーの仕事を奪ってしまう。カテリアーナはエルシーに促されるまま、ドレスに着替える。

「とても軽いのね。どんな素材を使っているのかしら?」
 
 成人の儀でノワールから贈られたドレスも軽かった。どういう材料を使えば、このように軽くなるのか不思議に思っていたのだ。

「ルア紡ぎと申します。満月の夜に採れた(まゆ)を使うとこのように軽くなるのですよ。反対に朝採りの繭はソル紡ぎというのです。こちらは光沢がありますが少し重いのです。ですが、好んでソル紡ぎのドレスを着る方もいらっしゃいますよ」

 妖精の国はカテリアーナの知らないことだらけだ。これからしっかり学ばなければならない。

「御髪が少し痛んでおられますね。きれいな金の髪ですので、これからしっかりケアしてまいりましょうね」

 エルシーは楽しそうにカテリアーナの髪を結っている。毎日こういう日々が訪れるのかと思うと、カテリアーナは少し楽しみだった。

「バラをつけて、これで仕上がりです。さあ、全身鏡の前に立ってみてくださいませ」

 鏡台の隣に立てかけてある全身鏡の前にカテリアーナは立つ。

「とてもお美しいです。陛下が見惚れること間違いなしです」
「エルシーの腕がいいのよ。きれいにしてくれてありがとう」
「カテリアーナ様は素のままでも十分お美しいですよ」

 ラストリア王国では『取り替え姫』と散々蔑まれていたので、カテリアーナは自分の美貌をいまいち理解できていない。
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