妖精姫ともふもふな妖精猫の王様~妖精の取り替え子と虐げられた王女は猫の王様と冒険がしたい~

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 怪我が完全に治ったノワールはある日、忽然(こつぜん)と姿を消した。

 おそらく飼い主の元に帰ったのだろうと誰もが思った。毛並みのいい猫だったので飼い主がいることは明らかだ。

 カテリアーナを始め離宮の人々の癒しだったノワールがいなくなったことで、始めのうちは皆寂しがった。

 ところが、寂しさが薄れた頃、再びノワールが姿を現したのだ。

「ノワール!」

 庭のしげみから姿を現したノワールに駆け寄り、カテリアーナは抱き上げる。

「飼い主のところには帰れたの? 傷口は……ほとんど目立たないわね。良かった」

 ひっかき傷があった部分には黒い毛が生え始めている。

 久しぶりにノワールの毛並みを堪能しているカテリアーナの胸元へノワールがにゃと前足を置く。

 カテリアーナが首からかけている鍵のペンダントに気づいたようだ。

「ノワールはこれ(、、)が見えるの?」

「見えるよ」と返事をするようにノワールがにゃあと鳴く。

「そのなのね。でもこれはわたくし以外の人には見えないみたいなの」

 夜空のような濃青色の石がはまったペンダントはカテリアーナ以外の人間には見えていないのだ。
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