妖精姫ともふもふな妖精猫の王様~妖精の取り替え子と虐げられた王女は猫の王様と冒険がしたい~

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 本来、貴族の令嬢が社交界デビューする際は親か婚約者がエスコートをするものだ。兄がいれば兄がエスコート役を務める場合もある。

 カテリアーナには婚約者はいない。そして、王太子である兄はエスコートを拒否した。父もだ。

 エスコート役を募集したのだが、『取り替え姫』のエスコート役を買って出る貴族はいなかった。見かねたストリングスが息子をエスコート役にと申し出てくれたのだ。

「こちらの大広間が会場となります」

 ここまで案内をしてくれた侍従は、カテリアーナをじろじろと眺めている。その視線に気づいたアイザックが侍従を睨む。

「王女殿下に対して無礼であろう」
「いいのです、アイザック卿。ここまで案内ご苦労様でした」

 カテリアーナは侍従を労う。侍従はつんとすました顔で一礼すると、元来た道を戻っていった。

「殿下はお人が良すぎます」
「そんなことはないわ。心の中では舌打ちしているのよ」

 ふふと微笑むカテリアーナにつられて、アイザックも微笑む。
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