冷たい海
病室の窓から白い朝日が微かに射し込んだ。
「りょう……へい……」
「みか……美夏!」
彼女は薄っすらと、微かに目を開けた。僕は自分の掌にさらに力を入れて、彼女の手を固く握った。彼女は弱弱しい力で僕の手を握り返し、最後の力をふり絞って消えそうなほどに細い声を出した。
「おねが……いって。えんそうか……」
酸素マスク越しに彼女が言ったことは分かった。『演奏会に行って』。でも、僕は首を横に振った。
「嫌だ。僕は……美夏の側にいる!」
その言葉を聞いた彼女の瞳からは一筋の涙が頬を伝って輝いた。嬉しそうに頬が緩むのが分かった。
だが、彼女は目を瞑って首を横に振った。
「ダメ……いって。わたしの……さいごの……おねが……」
最後のお願い……僕が叶えてやると誓ったそれは、いつも我儘な彼女がねだった今までで一番お利口なお願いだった。本当はもっともっと、無茶なお願いをして欲しかった。僕は彼女のためならば、この命をも投げ出す覚悟さえできていた。
でも、それなのに。
「おねが……りょうへい。ゆめ……みさせて」
彼女が最後に願ったのは自身のためではない……僕と箏奏を聴く人、皆のためのお願いだった。僕は彼女のその、今までで一番お利口な『最後のお願い』を聞かざるを得なかったのだ。
「りょう……へい……」
「みか……美夏!」
彼女は薄っすらと、微かに目を開けた。僕は自分の掌にさらに力を入れて、彼女の手を固く握った。彼女は弱弱しい力で僕の手を握り返し、最後の力をふり絞って消えそうなほどに細い声を出した。
「おねが……いって。えんそうか……」
酸素マスク越しに彼女が言ったことは分かった。『演奏会に行って』。でも、僕は首を横に振った。
「嫌だ。僕は……美夏の側にいる!」
その言葉を聞いた彼女の瞳からは一筋の涙が頬を伝って輝いた。嬉しそうに頬が緩むのが分かった。
だが、彼女は目を瞑って首を横に振った。
「ダメ……いって。わたしの……さいごの……おねが……」
最後のお願い……僕が叶えてやると誓ったそれは、いつも我儘な彼女がねだった今までで一番お利口なお願いだった。本当はもっともっと、無茶なお願いをして欲しかった。僕は彼女のためならば、この命をも投げ出す覚悟さえできていた。
でも、それなのに。
「おねが……りょうへい。ゆめ……みさせて」
彼女が最後に願ったのは自身のためではない……僕と箏奏を聴く人、皆のためのお願いだった。僕は彼女のその、今までで一番お利口な『最後のお願い』を聞かざるを得なかったのだ。