王子と社長と元彼に迫られています!
食器を運んでシンクの中に重ねる。後片付けは紬くんが帰ってからにしようと思い、お茶を入れてお菓子と一緒にお盆に乗せ部屋に戻ると紬くんが毛先の長いチョコレートブラウンのラグの上に横になって寝ていた。天使みたいな寝顔だ。彼に出逢うまで成人男性に対して『天使みたい』なんて言葉を使うとは思わなかった。本当に紬くんて稀有な存在だ。

『疲れてるのにありがとね。』小さな声でお礼を言ってベッドから毛布をとり彼の体にそっとかけた。


*****

「う~ん、どうしよ・・・。」

終電の時間が近づいてきて紬くんを起こしたのだが起きない。お風呂に入っている間に起きてしまったらあれだからと思ってまだ入っていなかった。

寝ている人を起こす時には・・・と思いかけて、ゲームセンターでの優悟とのキスを思い出して顔が熱くなってきてしまう。そうだ、もし紬くんを家に泊めたりしたらそれも彼に見られてしまう。なんとか起こさなきゃ。

「紬くん、終電行っちゃうよ!」

ゆさゆさ揺すってみるものの、すーすーという規則正しい寝息が乱れることはなかった。

彼を起こそうと試みているうちに私にも睡魔の魔の手が伸びてきた。いけない、と思ったのに昨日優悟のメッセージが気になりあまり眠れなかった私はあっさり敗北し、紬くんのお腹の上に顔を乗せるようにして睡魔に誘われるまま心地よい眠りについてしまったのだった。
< 129 / 203 >

この作品をシェア

pagetop