王子と社長と元彼に迫られています!
「昨日は急に帰ったりして本当にごめん。俺、お台場で王子に会ってから、もしかして自分が見てる夢は現実なのかもしれないって思い始めてた。でも一昨日の夢で千咲が王子と社長に『元彼のことが好きだから二人とは誕生日を過ごせない。』って言ってて、あの二人よりも俺なんかを選ぶはずないから、やっぱり俺が見てるのはただの夢なんだと思ってたんだ。だけど、昨日千咲の口から真実を聞いて、信じられないくらい嬉しくて、どうしたらいいのかわからなくてパニクッちゃって・・・。」

優悟が話している間、彼の顔を見ているとまるでりんごが色づいていくのを早送りで見ているかのように頬が赤く染まっていった。

「でも私は、あの二人と・・・。」

「それはいい・・・全然よくないけど、いい。」

「全然よくないんじゃん。そりゃそうだよね・・・。」

しゅんとして俯いた私は優悟に包まれていた。ドサッという音がして落ちた資料が床に広がった。昨日から落としてばかりで申し訳ない。

「嫉妬で狂いそうだけど、ハイスペックイケメン達とあんなに甘い時間過ごしたのに、俺のところに帰って来てくれた・・・だからもう全部どうでもいい。」

いつもニュートラルだった彼の感極まったその声に心が揺さぶられる。少し掠れていて何だか色気を感じてしまう。

「・・・いいの?こんな私で?」

「千咲と離れるなんて無理だ。千咲のいない毎日は豚肉が入ってない酢豚みたいなもんだよ。」

「それ・・・酢豚じゃないじゃん・・・酢野菜じゃん・・・。」

そう言いながら先程引っ込めた涙がとめどなく溢れてきた。優悟の服を濡らしてしまう、と思って顔を離そうとしたが彼の胸にぐっと押しつけられる。

「ね・・・そんなにぎゅっとされたら鼻がつぶれてブタッ鼻になっちゃうよ・・・。」

「ブタッ鼻でブヒブヒしてても好きだ。」

「!?酢豚だけに!?」

二人同時に吹き出す。互いの目に浮かんでいる涙がなんの涙かわからなくなるほどゲラゲラ笑ってから優悟が私の涙を指で拭ってくれ、次に自分の涙を拭った。

「今日と明日、予定ある?」

「え、あ、特に・・・。」

ソロバースデーの計画が書かれた頭の中のメモ帳の上に『削除しますか?』というウィンドウが表示され、即座に『OK』をクリックした。
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