王子と社長と元彼に迫られています!
「・・・名古屋の会社から誘われたんだろ?千咲にとってすごいチャンスだと思うから、行きたいなら行った方がいいんじゃないかと思う。」

「え・・・。」

「もし千咲が行くなら俺、名古屋支社に異動願い出す。もし通らなかったら会社辞めて名古屋で転職する。」

「えええっ!!私なんかの為にあんな大手の会社辞めるなんて、そんな・・・あ!紬くんが『フリーのwebデザイナーになる。』って言ってくれてたから・・・!?あれは、彼はそういう職種だからだし今の会社で辛いことがあるからで・・・。」

「あいつに対抗してる訳じゃない。自分の考えで本気でそうしたいと思って言ってる。中途半端な気持ちで『結婚したい。』なんて言わない。俺なりに覚悟してるんだ。」

優悟の真剣な気持ちが嬉しくて胸がいっぱいになる。

「ごめん優悟、その話なんだけどね。」

「うん。」

「会社に誘って頂いたこと、すごくありがたい話なのは私もわかってる。でもやっぱり今の仕事が好きでこのまま続けたいんだ。昨日展示会に行って改めてそう思ったの。いい歳して青いこと、甘いこと言ってるかもしれない。正社員じゃないし、せっかくのチャンスを棒に振っちゃって将来後悔するかもしれないけど・・・。」

将来のことを考えると少し怖くて彼の手をぎゅっと握り返す。

「・・・もし後悔することがあったら俺のせいにしたらいい。名古屋に行ったら自分のために俺が会社辞めたりするかもしれないから、東京にいることにしたんだって、そう思ったらいい。」

「ありがとう優悟・・・でもそういうわけにはいかないよ。これは私が自分の責任で決めたことだから、後悔もちゃんと自分で受けとめる。」

「千咲が後悔を受けとめる日が来ても、俺がそばにいる。愚痴るなら一緒に飲むし、泣くなら抱きしめて涙を拭う。だから安心して自分が進みたい道を進んだらいい。」

涙で視界が霞んだ目で優悟の目を見つめると優しく力強い眼差しを返してくれた。それはすごく心強くて一人でいるよりもずっと大きな勇気が湧いてくるようだった。
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