王子と社長と元彼に迫られています!
「・・・ふわあぁ・・・眠い。」

優悟が大きなあくびをした。家にいると寝てしまうと思ったから、体がカッカして目が覚めそうな激辛料理のお店で夕食をとり(お酒はなし)24時間営業のゲームセンターに来た。ここなら明るくて騒がしいし、体を動かしていれば寝てしまうことはないだろうと考えたのだ。

カラオケで2時間歌ってから、ボウリング、卓球、ビリヤード、ダーツ、バッティング、と一通りやって、ゲームコーナーでクレーンゲームやコインゲーム、もぐらたたき、腕ずもう、金魚すくいなどのゲームを片っ端からプレイしていたら時刻は4時になるところだった。

日の出予定時刻を調べたら6:49だったのでまだ3時間近くある。『日の出まで起きていれば昨日私と暁さんの間に起きたことを優悟に夢で見られない。』という保証はどこにもないけれど、とにかくそうしてみることにしたのだ。

今私達がやっているのは車型のゲーム機で、一人がハンドルを握ってアクセルを踏み運転、一人が銃を持って敵の宇宙人を倒しながら進むゲームだ。優悟に銃を持たせた方が攻撃に集中することで眠気がごまかされるかもと思っていたが、彼は今にも寝そうで銃を持ったままボーッとしている為、私達の車は敵の攻撃をどんどん受けている。車の中が薄暗いのが眠気を誘ってしまったのかもしれない。

「優悟、ちゃんと攻撃して!ゲームオーバーになっちゃうよ!」

「眠みーんだもん。千咲は眠くないの?」

「そりゃ、眠いよ。学生の時だってオールで遊んだことなんてないし。」

「・・・じゃ、なんで『今夜は夜通し遊ぼう!共に輝く朝日を浴びようぜ!』なんて張り切ってるんだよ。出張でなんか嫌なことでもあったのか・・・?」

「嫌なことっていうか・・・。」

言いかけて、優悟が夢の世界に旅立つ寸前なことに気がつく。もう体は浮いていて、爪先だけが地面についている状態だ。なんとかこの場に留めねば。

「優悟、ねえ、起きて!起きないと大変なことになるよ!」

───私がね!

体をゆさゆさ揺らしたり頬をぺちぺち叩いても彼の目が開くことはない。眠っている人を起こすにはどうしたら・・・その時私の頭にあの童話のクライマックスシーンが浮かんだ。王子様が眠ったお姫様を起こす為に何をしたか・・・。
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