受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

 レーヴを抱えたまま、馬車が出ている地域まで戻ってきたデュークは、かなりの距離を走ってきたというのに、荒い息さえ吐いていなかった。
 涼しい顔をしたまま馬車を手配し、レーヴと一緒に乗り込む。

 馬車に入るなり、デュークはレーヴの隣へ座ろうとした。
 しかし、先日お尻を触られたことを思い出したレーヴが「そそそそ、そっちに座って!」と半泣きになって訴えたので、向かい合わせで腰掛けることになった。

 ついさっきレーヴが来たばかりの道を、馬車は戻っていく。
 この馬車はどこへ向かっているのだろう。そういえば行先を聞いていなかったとレーヴが思っていたところへ、

「レーヴ。せっかくだから、この前の話の続きをしようか? 王都に着くまで時間もたっぷりあることだし」

 と提案され、レーヴは「お願い」と答えた。

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