受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される
一章

 ロスティ国の北には、魔の森と呼ばれる森がある。
 魔素が濃すぎて生きるには困難な場所だが、その過酷な環境で生きる生き物がいる。
 それが、魔獣と呼ばれる獣だ。

 魔獣は、一見すると狼や狐といった森に生息している動物とよく似ている。
 だが彼らは、魔力を行使した魔術を扱うことができるのだ。
 かわいらしいウサギの姿に油断していたら、炎を吐かれて大怪我を負った──なんて話を聞いたことがある。

 そんな危険な生き物ゆえに、魔獣は騎士や兵士が討伐する害獣だった。
 しかし、近年の研究で驚くべき生態が明らかにされ、それを機に魔獣は保護されるようになったのだとか。

「実は、その研究を発表した研究者というのが、わたくしの祖母なのですわ」

 マリー・クララベルと名乗った女性は、やわらかな笑みを浮かべてそう言った。
< 12 / 323 >

この作品をシェア

pagetop