受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される
 ボロボロ涙を流しながら、レーヴはどうすることもできずにただただデュークを見つめた。
 水の膜を介しても、彼と視線が交わることはない。

(もう好きじゃないなら、優しくしないでよ……好きにさせておいて、甘えることを覚えさせておいて、こんなの……ひどい)

 そう思うことが間違っているとわかっている。
 だけど、こんな時でも優しくしてくるデュークを憎く思わなくちゃ、立っていられなかった。

 袖を引くデュークを振り払う。
 レーヴの威嚇するような視線にデュークがますます誤解を深めたなんて、彼女は知る由もなかった。
< 256 / 323 >

この作品をシェア

pagetop