受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

 ロスティ国での夏の過ごし方は、あたたかな陽気を楽しむために庭や公園にブランケットを広げ、日光浴をしたり、読書をしたり、ピクニックをしたりするのが定番である。

 レーヴも、仕事の合間にはパン屋で買ったサンドイッチを持って、近くの公園で過ごすことが多い。

 春は軍事パレードの準備で忙しく、秋も収穫で忙しい。冬になれば問答無用で引きこもらざるを得ないため、夏は一番まったりしているのだ。

 顔を合わせてから三日後。レーヴの家に、デュークがやって来た。

 誘拐まがいの連行の翌日に顔合わせをしたということもあり、レーヴはてっきり連日会うものだと身構えていたのだが、そういうわけでもなかったらしい。

 今日か今日かと身構えていたレーヴは、すっかり肩透かしを食わされた気分だった。

 この三日間、レーヴは仕事とデュークのことしか考えていなかった。
 片膝を折り、恭しく手の甲へキスをされた記憶は、忘れようにも忘れられない。
 思い出すたびにベッドへ飛び込んでジタバタしたくなるので、今まで以上に仕事に熱が入った。
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