受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

 レーヴが言った入院の二文字に、ジョシュアは「うぐ」と苦しそうな声を漏らした。先日、強制入院させられそうになったことを思い出したのだろう。

 ジョシュアはバツが悪そうに座り直し、威厳を保とうとするかのように咳払いをすると、厳しい表情でレーヴを見てきた。
 さすが歴戦の猛者といった風格に、思わずレーヴの背筋が伸びる。

(さすが、おじいちゃん。切り替えが早い)

 話が終わるまで休憩時間は終わらないぞ。
 そう言わんばかりの様子に、レーヴは諦めのにじむ声で「わかっています」と答えた。

「まず、アーニャさんが見た男の人ですが……あの人は、元魔獣の獣人なんです」

「あら、獣人なの? 噂によれば獣人ってとても美形らしいけれど、どうだった?」

「はい、すっっごく美形です。正直言って、ジョージも敵いません。魔王とか堕天使といった存在と錯覚するような、厳格で妖艶で畏怖さえ感じるような美貌でして……あれは人外と言われても納得の──んん゛っ」

 デュークのすばらしい容貌を熱弁しかけて、レーヴは咳払いをして誤魔化す。
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