訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!

★君を誰にも渡さない

 そもそもの発端は何だったのか。マーガレット王女の我儘のせいで陸路で帰還する羽目になったことか、それともマーガレット王女に気に入られてしまったことか。あるいは。

 迷いを断ち切れず、想いを言葉にすることも出来ずに今日を迎えてしまった。婚約披露パーティにはふさわしい、初夏の晴れ晴れとした陽気で、空は青く澄み渡り、ローズが活けた色とりどりの花も見事だ。自分の心とは正反対の景色にため息が漏れる。

 王女に再三勧誘されているが、隣国へ行く気はさらさらない。今日も今日とて丁重に断りながらも、どうしてこんなことになっているのかと自問自答していた。そこへ執事のロバートが血相を変えてやってきたのだ。

「ローズがいない?」
「はい。屋敷中を探させているのですが、どこにも見当たりません……!」

 両親や公爵邸の私兵に厳重に護衛を頼んでいたので安心していたが、ローズには脅迫状が何通も届いているのだ。ほとんど全てが阿呆な令嬢や権力目的の弱小貴族の戯言だが、実行に移した馬鹿者がいるのかもしれない。

「探してくる。パーティが始まるまでに帰らなければ中止に。父上にも報告を。」
「承知しました。」

 ローズ!無事でいてくれ!心で強く願いながら、私はローズの魔力を探知すべく、捜索の魔法陣を展開した。彼女を失いたくない、見失うくらいなら、早く決着をつけるべきだったのだ。
 なぜ、こんなことになってしまったのか。
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