訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!

ウィルは昔から優秀で、魔法の才能に秀でていました。家庭教師も沢山居ていつも忙しそうでした。
 ですから、ウィルがその合間に我が家に来て遊んでくれると分かると、私は大量の花を咲かせ、大喜びしていたのです。

「ウィル!」

ウィルが来ると、わたしは玄関まで駆けていきます。抱き着く寸前でレディとしての嗜みを思い出し、急停止、スカートをつまんで礼をします。

「…いらっしゃい、ウィル。ごきげんよう。」

すると決まってウィルは優しく微笑み「こんにちは。僕のレディ。」と返してくれるのです。

ウィルはいつも甘いお菓子を持ってきてくれました。
 公爵家の長男として、その爵位を継ぐべく勉強で忙しいにもかかわらず、その時の流行りのお菓子を手に入れては「ローズにお土産。」と差し入れてくれていました。

 至る所に花を咲かせてしまう私を、面倒がったり嫌がったりしない。年下の私を馬鹿にもせず、レディとして扱ってくれます。レオンお兄様とは違う、格別にかっこよくて優しい男の子。

 私はその頃、とってもウィルが大好きでした。今思えば、儚い初恋でした。

「わたし、おおきくなったらウィルのおよめさんになりたいわ!」

 突拍子もない不謹慎で身の程知らずなお願いをしたこともありました。
 その時聞いていた大人もギョッとした目をしたのを覚えています。

 でも、ウィルだけは、私の前に跪いて「じゃあローズが素敵なレディになるのを待っている。」と優しく微笑んでくれたのでした。
 もちろん屋敷中にお花を咲かせたのは言うまでもありません。
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