嘘と愛
再びつながる愛…

 幸喜と楓はそのままシティーホテルのスイートルームにやって来た。
 ここは22年前に、幸喜とイルージュが結ばれた場所。

 部屋に入ると、幸喜はそっと楓を見つめた。

「ここから、またやり直そう。自分に正直になって」


 楓はギュッと唇を噛んだ。
 急に申し訳ない感情が込みあがってきて、楓はその場に膝をついて幸喜に土下座をした。



「ちょっと! なにするんだ! 」

 驚いた幸喜は楓に駆け寄り、頭を上げさせた。

「ごめんなさい! 全て私が悪いのです。あの夜、貴方を誘ったから」
「違う! 君は悪くない。誘ったのは僕だよ? 」

「ごめんなさい…。私が…私が…」
「ちょっと落ち着いて」

 そっと、幸喜は楓を抱きしめた。
 抱きしめた楓は震えていた…。

 ずっと閉まっていた想いが溢れてきて…
 それでもどこかまだ、自分を責めている罪悪感に駆られてしまったようだ。
 

「もういいんだ。君は何も悪くない。だから、もういいよね? 」

 そっと身体を離すと、幸喜は楓のサングラスを外した。
 
 サングラスを外されると、楓はスッと視線を落とした。

 素顔の楓は…。
 綺麗な切れ長の目に、筋の通った高い鼻に魅力的な唇。
 見ているだけでホッとさせられ、まるで女神のような顔をしている。
 そして、零にも似ている感じがある。

 楓は視線を落としたまま黙っている…。

「イリュージュ、ちゃんと顔を上げて僕を見て」

 そう言われると、楓はゆっくりと視線を上げて幸喜を見た。

 とても澄んだ緑色の瞳…
 その瞳には一欠けらの悪意も感じない…。

「おかえり、イリュージュ。ずっと、待っていたよ」
「…幸喜さん…」

 スッと楓の頬に涙が伝った…。
 その涙を幸喜はそっと拭った。

「もう終わりにしよう、自分を犠牲にするのは…。一番大切なのは、自分だよ」
「…はい…」


 小さく返事をした楓の唇に、幸喜はそっとキスをした。


 唇が離れると、幸喜はそっと微笑んだ。

「愛しているよ、イリュージュ…」

 もう一度唇いキスをする幸喜…。
 探り合うキスから…求め合うキスになり…。

 お互いの服を脱がせて行った…
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