嘘と愛
近づく距離

 仕事の休憩中。

 零は休憩所で1人、事件の事を考えていた。
 意識不明のディアナが何故いなくなったのか…。

 あの目撃証言と、ディアナが金銭のやり取りをしていた証拠。
 動けないディアナがどうやって…。

 
 ピコン…。

 零が考え事をしていると、メールの着信音が鳴った。

 画面を見てみると大雅からだった。

(元気? ねぇ、明日は週末。次の日は休み。夕飯一緒に食べようよ。とびっきりおいしいお店に連れて行くからさぁ)

 いつもメールしてくるのに元気? ってなんなんだろう?
 返事をしなくてもずっとメールしてくれる。
 でも…受け取るのが嫌じゃないのは、なんでだろう?

 零の中で判らない感情が込みあがっていた。




 夕刻になり。
 今日は零も定時で帰れる。

 定時は17時。
 いつも残業が多く帰りは深夜になる事も多いが、今日は早く終わった零。

 早く帰っても特にやる事はない…。
 とりあえずどこかに寄り道でもしてゆくかな。

 そんな事を思いながら、零は警察署から出て来た。


「あれ? 零ちゃん? 」

 声がして、零は振り向いた。


「やっぱり零ちゃんだ! 」

 振り向いた先にいたのは大雅だった。

 なんでここに? 
 まさか、バレた? 刑事だって事…。

 ちょっと驚いている零に、大雅は笑みを浮かべて駆け寄ってきた。

「どうしたの? こんなところで。もしかして、零ちゃんも免許の更新? 」
「あ、まぁ…」

 何だ、免許の更新かぁ。
 優良ドライバーなら、警察署で更新できるからね…。
 
 とりあえずホッとした零。

 

「零ちゃんも優良ドライバーなんだね? 俺と一緒じゃん」
「いえ…その…。そうでは…」

 零はちょっと言い淀んだ。

「あ! そうだ。ねぇ、ご飯行こうよ。美味しいお店案内するよ」
「い、いえ。…私…」
「行こう! 」

 大雅は零の右手をギュッと掴んで、歩き出した。

「ちょ…ちょっと待って下さい…」

 呼び止める零の声も聞かず、大雅はどんどん歩き出した。

 背の高い大雅に引っ張られると、零は振り払うことが出来ずそのま着いて行くしかなかった。

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