嘘と愛
動き出した過去
 時は巡り…あれから22年の月日が流れた… …。
 
 あの誘拐事件の双子の赤ちゃん、桜と椿が産まれた同じ季節が巡ってきた。
 桜が舞い散る4月。

 それほど都会でもなく田舎でもない、ごく普通の街並みが見える金奈市(こんなし)。
 駅前は賑わっているが、少し奥に入ると住宅地や田畑が広がっている静かな街並み。

 賑わっているのは駅前。

 ここにはオフィスビル街がある。
 そして大手ショッピングモールも建設されているため、多くの人が行き来している。
 
 仕事に行く人や電車に乗る人や、買い物に来た人などが賑わっている為、駅前の空間は大勢の人が集まっているように見える。
 

 そんな人ごみの中。
 ポツンと佇んで、オフィスビルを見つめている一人の女性がいた。
 モデルのようにスラっとした長身で、推定170㎝はありそうな背丈で、とても上品な顔立ちにメガネをかけているが、メガネの奥は魅力的な切れ長の目に、綺麗に筋の通った高い鼻にプルっとした唇は見ていると引き寄せられてしまいそうになるくらいで。
 綺麗な金色のショートヘヤーがとても似合っていて、一見は外国人のようにも見える女性。
 透き通る雪のような白い肌を見ていると、まるで天使のようでうっとりさせられる…。

 黒系のビシッとしたパンツスーツに身を包んでいて少し堅物な感じがするが、通り行く人達は思わず振り向いて二度見したくなるほど、どこか引き寄せられる魅力がある女性。

 ビルを見ていた女性はフッと小さく笑って、歩き出した。



 女性が見つめていたのは。
 自社ビルを構えている宗田ホールディング。
 世界を股にかける上場企業で、主に飲食店やIT企業をまとめている大手会社。
 社員は和気あいあいとして、みんな仲良くしている。
 評判が良く、就職希望者も圧倒的に多く競争率が高いと言われている。
< 4 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop