嘘と愛
22年の想い
 数日後。

 隆司が気になって病院に尋ねてゆくと、零は既に児童施設に送られた後だった。


 どこの児童施設に行ったのかは、病院は答えてくれなく、隆司は金奈市にある児童施設を探してやっと零のいる児童施設を見つけて、養女として引き取りたいと申し出た。

 施設側と市の審査があり、時間がかかったが無事に零を養女として引き取ることが出来た隆司と喜代華は来てくれた子供に「零」と名付けて大切に育てて行く事を決めた。

 零を養女にしてからは、隆司も子煩悩に目覚め帰って来るとずっと零を離さなかった。
 喜代華も零に癒され、病気で臥せっても零がいると元気になれると信じることが出来た。


 そんなある日。
 隆司は零が捨てられていた川岸に来てみた。

 それは誘拐事件として被害届けが出ていたが、犯人が見つからず迷宮入りになると思われた事件が、犯人が逮捕された事からだった。

 隆司は担当ではなかったが、逮捕された犯人は産みの母親の妹だったが、逮捕された妹を見てもとても誘拐をするような人には見えなかった。

 逮捕のきっかけは、産婦人科の助産師が目撃した証言から、任意同行が求められ素直に応じたのはいいものの、肝心なことになると曖昧で答えられなくなった事からだった。

 助産師の目撃情報は、誘拐された赤ちゃんの傍に居たところを見たとの証言だった。
 すぐに言えなかったのは、脅されていたとの事だったがそれもちょっと曖昧だった。

 隆司は遠目で見ていても、何か違和感を感じていた。

 そんな思いで川岸に来てみると。
 草むらの中に落ちている、赤ちゃんに付けれているネームリングを発見した。


 病院の名前は消えてしまっていたが、名前が桜(さくら)と書かれていた。
 場所的に零がいた場所と近く、ちょっと血痕もついていた。
 犯人が外したのか。それとも怪我をした時に外れたのか分からないが、零がつけていたネームリングに間違いないと思った隆司は誰にも気づかれないように鑑識に回して調べてもらった。
< 52 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop