冷たい雨
 成長期の時期の女の子は、結構みんな体つきも丸みを帯びて柔らかそうなイメージだけど、彼女に関しては何だか見た目の印象はみんなとは少し違う。とても繊細で見るからに儚い感じの見た目の子だったが、その見た目に反してバイタリティのある子で、クラス委員やらイベント事があれば、率先して参加するような子だった。

 この日、午後からの授業の前にクラス委員を決めなければならないとの事で、授業開始前に短時間だけホームルームの時間が取られていた。先生が教壇に立ち、誰か立候補する人はいないかとみんなに問いかけるも誰一人として手をあげる人間なんている訳がないと思っていたら、ただ一人、彼女は立候補した。
 面倒くさがりの僕には考えられない、その行動力に僕は彼女をただただ遠巻きに見ているだけにしようと心に誓ったその矢先……。

「男子のクラス委員には、白石遼(しらいしりょう)くんを推薦します」

 何の因果か、瀬戸さんは僕をみんなの前でクラス委員に推薦したのだ。
 冗談はやめて欲しい。僕はみんなと極力かかわらず、ひっそりと高校生活を送ろうと決めていたのだ。
 正直言って高校受験を失敗して、自分の意に反した学校に進学する事になり、これ以上悪目立ちをしたくなかった。
 出来る事ならば部活も入らずに授業が終わればすぐに下校したいくらいだ。

「だって、本当なら新入学生挨拶は、入試のテスト一位の成績者である白石くんがする予定だったんだよ?
 入学説明会の時に白石くん、挨拶は嫌だって断ったから、私がする事になったんだよ?
 クラス委員くらい、やってくれてもいいんじゃない?
 それに、私も一緒にやるんだから一人じゃないし」

 痛い所を突かれて、僕は何も言い返せない。クラスのみんなも、瀬戸さんのその一言でざわつき始めた。
 入試の順位なんて、普通結果なんて知り得る筈がない。僕が頑なに断った後、困り顔の先生が、二点差で僕の次の成績の子に代表挨拶を任せると言ってその任を解いてくれた事までは覚えている。
 でも、それが瀬戸さんの事だったとは知らなかった。そもそも入学式自体も興味がなく、新入学生代表挨拶も、誰が引き受けたかなんて見てもなかったし碌に聞いてもなかったのだから。

 瀬戸さんの言葉で、クラスのみんなの目が僕をまるで腫れ物を触る様な目つきに変わった。
 ただでさえ同じ中学校出身者が誰もいなくて浮いているのに、これ以上目立つ様な事を口にする事を止めて欲しい。
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